毒にも薬にもなる人生が目標のLeeの「別天地」

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目の前で人が倒れた
年の瀬の ちょっと遅い朝、寝起きの私は
「そうだ、焼きたてのパンでも買いに行ってみよ~」と
財布だけをコートのポケットに入れて、ぽてぽてと外出した。
近所のおいしいと評判のパン屋で菓子パンを買い込み、
「そうだ、今日はドラッグストアが年内最後のポイント2倍DAYだ☆」
といつもより遠回りして帰ろうと思って歩いていた。

目的のドラッグストアまでまっすぐ、あと1ブロック、になったときに
私の視野の中で、白髪の男性がこっちに向かって歩いてきた
が、あと少しですれ違うという矢先に視野から消えて
ズズズッ…っと頭が低くなった。
車道に前のめりに、倒れたのだ
その間、約2秒。

わーっ

すると、まず道路の反対側で乗用車に乗り込もうとした若い男性が駆け寄ってきて
私の横で携帯を出して「救急車呼びます!」と言う。
私は近所だからと油断して、財布しかもっていなかったので、携帯がなかった
若い男性が119番して
「えぇっと、ここは…たしか、■■幼稚園の近くなんですけど…」
と言っていたので、私がすぐ後ろのマンションの看板にある住所を指差すと
「あっ、ありました、住所は■■町0-00-00…
 そうです、お蕎麦屋さんの目の前です!」
と電話口の人に通じているようだった。
私は、道路に放り出された白髪男性のメガネを拾って、脇に置いた。

そこへ、ショートカットの50代くらいの女性も通りすがると
すぐに倒れた男性の頭の近くに膝をついて、耳元で声を掛けた
「大丈夫ですよー。救急車を呼びましたからねー。大丈夫」
そのあと、脈を図って、周りにいる私たちに向かって
「脈は正常にありますね」と言って、また男性の方に向いた
「わかりますか? ご自分のお名前を言えますか?」
倒れていた男性がなにかをつぶやいた。
「マツイさん(仮名)ですね? 下のお名前は?」
それから私たちに向かって
「誰か、メモをとってください!」と言う。
私は財布しか持っていない。
そこへ、体格のいい、長門裕之似のおじさんが近寄ってきて
上着からメモとペンを取り出して、すぐにメモを取り始めた。

倒れていた男性が また何かつぶやいたのを、ショートカット女性が復唱する
「マツイ ショウキチさんですね?
 マツイさん、かかりつけの病院はありますかー?」
ショートカットの女性が耳を口元に寄せる。
「慶應病院ですね? 何か持病はありますかー?」
長門さん似のおじさんは傍らでメモを取り続ける。

白髪の男性は車道に倒れてしまったために
急激に動かさないようにして車道の脇へ移動させていた。
ショートカットの女性は
「どこか、苦しい所はないですかー?」といって
ジャンパーの前を開けて、マフラーも取った。
携帯で救急車を呼んだ若い男性は
「すみません、もう行かなくてはいけないので。救急車は呼んであります」
と言って、立ち去った。
倒れた男性=マツイさんのそばには、ショートカット女性、長門裕之おじさん、私。
そこへ、蛍光色の商店街のジャンパーを来た男性が駆け寄ってきて
近くにあったハザードポールを移動させて
すぐ脇を通り過ぎる自動車の交通整理を始めた。
アスファルトに小さな血が落ちていた。
どうやらマツイさんは こめかみを打って、ちょっとケガをしていた。
ショートカット女性は自分の花柄のハンカチを出して、血をぬぐった。

ショートカット女性は膝まづいたままで、また声を掛ける。
「マツイさん、電話番号 言えますかー?」
また小さな声で答えたので、ショートカットが長門裕之に向かって復唱する
「3XXXのXXXX、ですねー?」
長門さんがメモを取って、すぐに自分の携帯でその番号に掛けるが
しばらくして首を振る
「…ダメです、呼び出し音がなりますが、誰も出ません」。
そのとき、遠くでかすかに救急車の音が聞こえて、私は声を上げた
「もうすぐ、もうすぐ救急車が来ますよ!」

すると、その声でマツイさんが突然、上半身を起こした。

「あの…わたし…近所で…
 多分てんかんの発作…なんです、だから…大丈夫です」
それでも目はややうつろで、こめかみ辺りが痣になりかかってた。
私もしゃがんで目線をマツイさんと同じにして話しかける
「でもね、頭も打ってるし、一度病院で診ておいた方が安心ですよ。
 もうお正月になると病院も閉まってしまいますんで
 後から痛くなったりすると、そっちの方が大変ですし
 私の祖母も昔、ガマンをして正月に救急車呼んだことがあるんです」

ほどなく救急車が停車して、隊員が近づいてくる。
ちょうどその頃、長門さんが掛けた電話が通じたらしく
家の人に事情を説明している。
マツイさん当人は、救急隊員を見ると自力で立とうとして
「…自宅が近いんで、家で休みたいんです…」と言う。
隊員はやさしく声を掛ける
「病院に行っても行かなくても、まずは一旦、車の中で血圧計りましょうね。
 それから病院に行くか、相談しましょう。まずは車へ」といって
2人がかかりでマツイさんを支えて救急車の後部座席に移動させた。

ショートカット女性は隊員に
「マツイショウキチさんです。脈拍は正常の範囲。
 慶應病院にかかっているそうで、てんかんの発作ではないかと仰ってました」

と 無駄なく てきぱきと伝えた。
私は、白髪男性が倒れる寸前まで持っていた紙袋とメガネを隊員に渡した。
電話を終えた長門さんが、家族との会話と電話番号を 隊員に伝えた。

ショートカット女性と私は数歩下がって、ホーっと息を吐いて救急車をみていた。
ショートカット女性は
「本当に良かったわ、ご本人に意識があったから…」と
膝の汚れも払わずに言った。
私は頭を下げながら話しかけた
「あの…急な対応、とっても勉強になりました。
 ああして声を掛けつづけて、名前を聞いて、かかりつけ病院や連絡先を聞くんですね」
「そうですね、意識が遠のくのを引き止めた方がいいんですよ」
どうしても聞いてみたくて、尋ねた、
「あの…失礼ですが、医療関係の方なんですか?」
ショートカット女性は、ちょっと小首をかしげて笑顔で答えてくれた
「じつは私、助産師なんですよ」
あぁ、そうだったんですかー!

そこへ、長門さんも救急隊員との話を終えて、こっちへ向かってきた。
ショートカット女性が長門さんをみて、ちょっと驚いていた
「あら? あの方はたしか…刑事さんだわ
長門さんに声を掛ける
「たしか、刑事さんですよね? お名前がミ…ミ…」
長門さんがまた照れた顔で答える
「はい、ミシマ(仮名)です…、あっ、あなたでしたか! これは気づきませんで。
 いやね、私は非番で帰るところでして、お恥ずかしい、こんなヒゲ面で…」
えぇっ、そんなドラマみたいなことがーーーーー???

交通整理をしていた商店街スタッフさんもハザードポールを片付けた。
あとは、隊員さんが処置をして、ご家族に連絡を取り続けてくれることだろう。
その場にいた私たちも
「それでは、良いお年を…」と口々に言いながら、会釈しあって、
それぞれ元々行くはずだった方向へと散っていった
(そのあと、私はポイント2倍DAYのドラッグストアに寄った)。


この間、たった10分くらいだったんだけど…私はあんまり役に立たなかったなぁ。
いろいろ勉強になった。
目の前で人が倒れたときの対応の仕方
知らない場所で救急に居場所を説明する方法
どんなに近所でも携帯電話は持ち歩くべきということ、
そしてできれば
自分の身元やかかりつけ病院が分かるものを持っていたほうがいいこと。

願わくはマツイさんが大事に至らずに、穏やかにお正月を迎えられますように。

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